nesno(ネスノ)紫外線と上手につきあう 群馬大学大学院医学系研究科皮膚科 石川治教授

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紫外線と上手につきあう 群馬大学大学院医学系研究科皮膚科 石川治教授
 紫外線は太陽光線に含まれていますが、波長が短いために私たちの目で見ることはできません。紫外線は波長により短波長紫外線(Ultraviolet C:UVC)、中波長紫外線(UVB)、長波長紫外線(UVA)に分けられます。UVCは最も細胞傷害性が強いのですが、オゾン層により吸収されてしまいますので地表にはほとんど届いていません。地表にはUVBとUVAが到達し肌(皮膚)にはさまざまな影響を与えます。なお、UVBはガラスを透過することはできません。
波長イラスト
UVBイラスト
 紫外線が皮膚に及ぼす影響には、太陽光線を浴びて数時間後から出現する日焼け(サンバーン:赤くなる反応)と数日後から出現する日焼け(サンタン:褐色になる反応)とがあります。しかし、これらの反応は数日ないし数か月で消えてしまいます。つまり、持続時間が短い急性型反応です。一方、生まれてから20年ほど経つとシミが、30~40年経つとシワが現れてきます。これらは、時が経つにつれて数、程度とも増してきます。このような皮膚の変化は「老徴」と呼ばれ、長い年月の間に紫外線を浴び続けた慢性型反応の結果です。これを光老化(photoaging)と言いますが、最近ではDermatoheliosis〈Derma(皮膚)+Helios(太陽)〉とも呼ばれています。もちろん、細胞自体も加齢とともに機能が低下しますので、皮膚に現れる老徴は暦上の生理的老化と光老化が合算されたものです。生理的老化は太陽に当たらないお尻の皮膚をみれば明らかです。細かいシワとたるみですね。一方、光老化が最も顕著に表れるのは顔、頚、手の甲などで、皮膚はやや黄色身を帯び、多数のシミとともに深いシワが刻まれます。さらに、50年以上経つと皮膚癌が発生し始めます。


 紫外線によってシミ、シワ、癌が起こる機序は医学的にかなり解明されています。細かい説明は省きますが、要は紫外線が細胞のDNAを傷つけるだけでなく、活性酸素を発生させて細胞機能に異常をもたらすためであると考えられています。ちなみに、真夏の昼間に20分ほど太陽に当たりますと、表皮細胞1個のDNA当たり10万~100万か所に傷ができます。しかし、私たちの細胞にはこうした傷を見つけ出して修復する機能が備わっていて数日で傷は修復されます。しかし、なかには見落としや修復間違いが起こることがあります。このような傷が長年に亘って蓄積する結果として皮膚癌などが発生するのです。
UVイラスト
 紫外線に対して私たちがとれる最善策は予防することです。しかし、全く太陽に当たらない生活をするなどということは現実的ではありません。そこで、最も確実で費用がかからない予防策はサンスクリーン剤(日焼け止め)を塗ることです。サンスクリーン剤に求められる機能は皮膚表面に止まって紫外線を反射・散乱・吸収して皮膚の中まで到達させないこと、および安全(刺激性がない、長期に使ってもアレルギーやニキビなどを起こさないなど)であることです。多機能型の電化製品や情報機器が数多く市場に出回っていますが、すべての機能が必要かと言えばそうでもありませんし、すべての機能を使いこなせる人は多くはありません。私もその一人です。本当に必要とされる機能が備わっていればそれで充分です。サンスクリーン剤も同じことが言えます。「紫外線を遮り、長く安全に使える」という機能があれば十分です。Simple is best !!
親子イラスト
 私たちは10代後半までに一生に浴びる紫外線量の半分近くを浴びてしまうと言われています。紫外線の慢性型反応が現れる、気付かれるのはそれ以降です。ですから、幼児期から紫外線防御対策をとることがとても大切です。教育現場ではまだまだ紫外線の罪や予防策の重要性についての理解に温度差があるようです。私たち黄色人種よりも紫外線の影響を強く受ける白人では、教育現場でも幼児期からのサンスクリーン剤使用が徹底されています。「サンスクリーン剤を塗って登園、登校しなければいけません」ということが当たり前となっています。10年後、20年後、30年後を見据えたライフスタイルを考えましょう。大人は大人自身が、子供に対しては親が責任をもって紫外線対策をしましょう。
群馬大学大学院医学系研究科皮膚科
石川 治 教授
群馬大学大学院医学系研究科皮膚科 石川  治 教授
紫外線と上手につきあう Simple is best