夏が近づき、薄着になって「はっ!」とするのが二の腕の太さや背中の肉づき。下半身はスカートやパンツのウエストがキツくなったりして気づきやすいのですが、上半身は意外に見過ごしがちですよね。でもこの上半身の肉づき、脂肪というものについて考えることは代謝アップの重要キーなのです。ひとくちに脂肪といっても脂肪細胞には白色脂肪細胞と褐色脂肪細胞、2タイプあります。白色脂肪細胞は全身のあらゆるところに存在していますが、とくに下腹部、お尻、太もも、背中、腕、内蔵まわりなどに多く存在。体内に入った余分なカロリーを中性脂肪というかたちで蓄積する働きを持っています。褐色脂肪細胞のほうは、首のまわり、脇の下、肩甲骨まわり、心臓まわり、腎臓まわりに存在。その細胞内にはエネルギーを産生するミトコンドリアが通常より多く存在するため、体内に蓄積された余分なカロリーをエネルギーに変える働きがあります。つまり2つの脂肪細胞は「溜める」と「燃やす」逆の働きを持っているということです。
褐色脂肪細胞が存在するのは主に上半身です。褐色脂肪細胞の働きを活発にすることで、食事から摂ったカロリーを体温維持のために消費し、代謝の良い、太りにくいからだづくりを促せます。但し、細胞でエネルギー代謝が行われた後には、必ず二酸化炭素や乳酸などの老廃物が生じます。それらを回収して尿や汗として排出する浄化システムが静脈血やリンパです。体の隅々まで張り巡らされている毛細血管やリンパの流れが滞ってしまうとどうなるか? 重だるいむくみ感、水分や老廃物を脂肪細胞が吸収して増殖=肌表面を凸凹とさせるセルライトにつながります。そう、良好な体調、美しいボディライン、透明感のある肌を保つには、代謝アップと同時に血流やリンパの流れを良くするケアが必要です。そして全身に600箇所以上存在するリンパ節のうち、約半分は上半身にあります。もちろん小マメなマッサージも有効ですが、おすすめはインナーマッスルから皮膚表面までを動かせるストレッチ。毎日数分あれば、簡単に褐色脂肪細胞、血流とリンパの流れに同時にアプローチすることができ、肩甲骨を動かすことで肩コリも緩和します。
今回お伝えするのは、褐色脂肪細胞のある肩甲骨まわりと、鎖骨まわりや脇の下のリンパ節を活性化できる上半身ストレッチです。まずは自然な呼吸で、腰を傷めないためにも第1回の骨盤のポジションを確認しながら、①~③までの動きをゆっくりと行ってみてください。
腕を上げるのがつらい方、空間や時間に制限がある時には③の動きのみでもOKです。鎖骨や脇の下のリンパへのアプローチ度合いは減ってしまいますが、胸を開いて背中の肩甲骨を寄せる動きで褐色脂肪細胞への働きかけは可能です。また、"胸を開く"という動きは、心臓の前に位置する小さな臓器、胸腺の活性化につながります。胸腺は免疫力アップと関わりの深い臓器として知られていますが、思春期に最大となりその後は徐々に衰えます。胸腺の活性化は、褐色脂肪細胞の活性、血流やリンパの流れの促進とあわせて、健やかな美しさを保つのに見逃せないポイントです。動きに慣れたら、第1回の呼吸法を合わせるとより効果的。①息を吸いながら腕をまっすぐ伸ばし、後方へ引く。②息を2?3秒止めて合掌した手を開き、息を吐きながら腕を降ろす。③息を吸いながら両ひじを後方へ引く、息を2~3秒止めて静止、息を吐きながら両ひじを戻す。パワフルな腹式呼吸法×ストレッチは、お腹のリンパや腸の働きも活性化したいという積極派の方、梅雨のウツウツ気分対策として自律神経のリズムを整えたい方にもおすすめです。