第1回 美肌の「いろは」は角質層から。

基礎化粧品とスキンケア

こんにちは。キレイのいろは「お肌のこと」。私、ネスノ開発責任者 茂田正和が担当させていただきます。10年ほど前まででしょうか、化粧水や乳液、クリームなどを「基礎化粧品」と呼びました。当時の目的は、お肌を良くするということより、お化粧のノリを良くするための下地づくりだったのです。その後、日本の化粧品はいろいろな歴史を経て、今ではお化粧のためというより、お肌を健やかに保つ目的が色濃くなって、「スキンケア」と呼ばれるようになりました。ですが、基礎化粧品時代のなごりを今でも引きずっているスキンケアの開発者は多く、その結果として、お肌を良くするはずのものが、使えば使うほどお肌本来のチカラを失わせてしまうということが多くの人のお肌で起こっています。私自身、いろいろな人のお肌のご相談を受けるなかで、お金も時間もかけて手厚くお肌のケアしている人に限って、キメがなく水分量も低下しているという現象を目の当たりにしてきました。どうしてそんなことが起こるのか? お肌のしくみをきちんと理解すれば、その理由がはっきりしてきます。

あなたのお肌はどっちのリンゴ?

例えば、リンゴを半分に切って、そのまま放置します。時間がたつにつれ乾燥して干からびていきます。次に切った直後にラップをして放置します。24時間たってもみずみずしいままです。「そんなの、あたりまえじゃん!!」と言われてしまいそうですね。何がお話ししたいかと言うと、皆さまのお肌の一番外側には、生まれながらにそのラップの役割をする膜があって、それが全身を囲んでいます。それによって、お肌の潤いを閉じ込めているのと同時に、外から余分な水や、花粉のような刺激物が体内に入ることを防いでいるのです。だから、お風呂に長時間入っても水ぶくれして体重が増えることはないし、海水浴に行っても塩漬けになることはありませんよね。

どんな化粧品よりもすぐれた保湿膜「角質層」。

このラップの役割をしているのは、お肌の一番表面にある、厚さ0.02mmの角質層という部分。角質層は角質細胞と呼ばれる細胞の死骸が15?20層重なりあっていて、その細胞の隙間を細胞間脂質という油分が埋めつくしています。お肌の油分というと皮脂をイメージするかもしれませんが、皮脂は毛穴から出る油分で、この細胞間脂質は細胞の中から出る油分。全くの別物で、セラミド・コレステロール・脂肪酸がある決まった比率で混ざりあって、ラメラ構造という特殊な形をしています。この細胞間脂質は人工では決して作ることのできない優れた保湿力があって、一昔前は肌を保湿しているのは皮脂と言われていましたが、今では皮脂はほとんど保湿の役にはたってなく、この細胞間脂質こそが保湿していると言われています。 この角質細胞と細胞間脂質によってできる角質層によって、外から異物や刺激物が体の中に侵入することを防ぎ、肌の中の水分が外に逃げるのを防いでいます。これを角質層のバリア機能というのです。

肌体力あり
肌体力なし
角質層の弱点、「オイル」と「界面活性剤」。

角質層はとても大切なのです。バリア機能はもちろん、お肌の表面でいろいろな危険信号をキャッチして、奥の細胞に防御するための指示も出したりします。角質層がなければ人は生きて行くことはできませんし、健康な角質層なくして美肌なんてありえません。
ですが、その角質層には弱点があります。それは、オイルと界面活性剤。乳液やクリームの中心となる成分です。油分に溶け込むオイルや界面活性剤は、当然細胞間脂質にも溶け込んで、セラミド・コレステロール・脂肪酸の比率を崩してラメラ構造を壊してしまいます。こうなると、水分を閉じ込めることができなくなってお肌を乾燥させ、外からの刺激にも弱くなっていろいろなトラブルを引き起こしてしまうのです。まさにラップをしないで放置したリンゴです。
ここまでお話しをしても「保湿にはオイルが大切!」と信じて疑わない人もいるかもしれません。でも、考えてみてください。オイルが保湿するのなら、オイリー肌の人は乾燥知らずのはず。でも実際は皮脂量が多くてオイリーな人ほど乾燥に悩まされていたりします。
「細胞間脂質もオイルでは?」とよく質問されます。確かに油分の一種ですが、特殊な構造をしたものであって、化粧品のオイルとは比べものになりません。残念ながら今の化粧品技術では細胞間脂質を人工的に作ることはできないのです。ですから、細胞間脂質の代わりになるものを補給しようとすることより、細胞間脂質を壊さないケアをすることが、今の科学では最良のスキンケアなのです。



皆さまのお肌がいつまでも、みずみずしいリンゴであり続けられるように、「お肌のこと」ではこの角質層を守るお手入れのコツを中心にお伝えしたいと思います。

あ、それと。。。
ちょっと難しかったかも知れませんが、「角質層」「角質細胞」「細胞間脂質」「バリア機能」この4つの言葉だけ、覚えておいてください。

茂田正和
文章・茂田正和
2002年より化粧品開発に従事するとともに日本化粧品技術者会、皮膚科医学会に参加し、化粧品学、皮膚科学を学ぶ。2004年にスキンケアブランド「ネスノ」を開発。2010年にスキンケア、ボディーワーク、フードなどトータルライフスタイルから築く真の美容を広く提唱すべく「バランスケア アソシエーション」を設立。多くの美容関係者とともにセミナーやワークショップを開催。ファッション誌リンネル等でも美容に関わる記事を執筆する。
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