第2回 歳をとらない素肌の仕組み

美白化粧品は日本だけ!?

化粧品開発者という仕事を始めて、もう10年以上になりますが、今まで一度も美白化粧品というものを作ったことがありません。作れないわけじゃないんですよ。でも、これからもきっと作らない。実は美白化粧品がこんなに流行っているのって日本や韓国などのごく一部の国だけなんですよ。海外の人、特に白人の人は積極的に美白ケアをする日本人を見て「???」。今回はその理由についてお伝えします。

メラニンは敵or味方?

「シミの原因メラニン」などと犯罪者のように悪者扱いされますが、そもそも「メラニン」って何のためにあるのでしょうか? 紫外線がお肌の表面にあたると、危険信号が表皮の基底層と言われる部分の細胞に伝わります。そうすると、メラノサイトと呼ばれる細胞がメラニンを作り始めて、周りの細胞に受け渡します。メラニンは細胞の中心「細胞核」が帽子をかぶるように配置されます。細胞核はDNAが詰まっているとても重要な部分で、DNAは紫外線によって壊れてしまいます。それを防ぐために遮光カーテンのような役割をするのがメラニンです。それだけではありません。お肌のハリや弾力を保っている真皮も紫外線によって組織が壊れてしまいます。これを光老化と言って、人の見た目の老化は加齢による自然老化が20%、紫外線による光老化が80%とも言われています。例えば、普段紫外線が当たりにくいお尻を見ても年齢を言い当てることは難しいですが、顔を見ればだいたいの年齢が分かります。これは、顔の方が紫外線によって老化が進行しやすいからなのです。この光老化からも守るのがメラニンです。

メラニンは敵or味方?

ちょっとここで質問。「黒人の老人を思い浮かべてください」。パッと思い浮かびましたか? 白人の老人と言われるとすぐに思い浮かぶけれど、黒人の老人だとあまり思い浮かばないのでは? もちろん、黒人にも老人はいます。ですが、黒人の方は生まれながらにメラニン量が多いため紫外線による見た目の老化が進行しにくいのです。それに対して白人の方はメラニン量が少ないため老化が進行しやすいのです。つまりメラニンはシミの原因にはなるけど、老化を防いでくれる、敵とも身方とも言いがたい存在なのです。

美白ケアの意外な落とし穴

美白化粧品にはいくつか種類はありますが、一番多いのはメラニンの生成をストップさせるというものです。私たち日本人は黄色人種で、メラニン量は白人と黒人の中間。そういう意味では白人よりも老化しにくい恵まれた肌質なのです。なのに美白化粧品でメラニンの生成を止めて、わざわざ老化しやすい肌にする日本人の行動を、白人の人は疑問に思っているのです。ちなみに、美白化粧品は漂白剤ではありませんから、できてしまったシミを消すことはできません。できたシミを消すのはピーリングやレーザー治療であって、美白化粧品はあくまで予防です。「ちょっと薄くなったかな・・・?」程度の効果はあるかもしれませんが。

大切なのは「紫外線を浴びない」こと

ここまででお分かりいただけたと思いますが、メラニンはお肌を紫外線から守り老化しにくくする大切な役割があります。できたメラニンは通常お肌の新陳代謝「ターンオーバー」によって垢と一緒に排出されますが、過剰にできると排出されきらず、お肌に残り続けてシミ・ソバカスの原因になります。
お肌は老化させたくない、かといってシミ・ソバカスを作りたくない。そのためにできることはただ一つ、「紫外線を浴びない」ということです。美白ケアをはじめる前に、まずはUVケアを見直してください。メラニンと上手につきあってキレイなお肌をキープしましょう。

茂田正和
文章・茂田正和
2002年より化粧品開発に従事するとともに日本化粧品技術者会、皮膚科医学会に参加し、化粧品学、皮膚科学を学ぶ。2004年にスキンケアブランド「ネスノ」を開発。2010年にスキンケア、ボディーワーク、フードなどトータルライフスタイルから築く真の美容を広く提唱すべく「バランスケア アソシエーション」を設立。多くの美容関係者とともにセミナーやワークショップを開催。ファッション誌リンネル等でも美容に関わる記事を執筆する。
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